「世界トイレの日」って?

 

世界ではいまだ、3人にひとりがトイレを使えない現実があります。

トイレがない人たちは、バケツやビニール袋で用を足したり、屋外で排泄をしたりしています。

この排泄物には、病気を引き起こす細菌がたくさん含まれています。

トイレがないところでは、細菌がいろんなところから体に侵入してきて

それらが原因で、免疫力の弱い子どもたちは下痢を発症し

1日に800人以上が命を落としています。

トイレにまつわる問題を、世界のみなさんで考えて、少しでも改善するために

2013年、国連は毎年11月19日を「世界トイレの日」(World Toilet Day)と定めました。(UNICEF「世界トイレの日プロジェクト」より)

 

ベトナム・コントゥム省での取り組み

地域内に設置されていたトイレ。地域内のトイレは囲いが不十分で浄化槽もない穴だけのトイレでした
地域内に設置されていたトイレ。地域内のトイレは囲いが不十分で浄化槽もない穴だけのトイレでした

ベトナム中部にあり、ラオス、カンボジアと国境を接するコントゥム省。

ベトナム国内でも最貧省の1つに数えられ、5歳未満の子どもの4人に1人が低体重という、栄養に関する課題を抱えていました。

 

FIDRは2011年に支援に向けた調査を行い、2012年から6年間「子どもの栄養改善プロジェクト」を実施し、お母さんたちへの、栄養に関する基礎知識の研修や家庭菜園の推奨、栄養価の高い離乳食の調理実習に取り組みました。そのほかに、FIDRが取り組んだことがありました。

 

他の開発途上国にみられるように、コントゥム省でもトイレのない家庭が一般的です。

洗濯や水浴びは、川や井戸まで出かけて行う必要があり、汚物が感染源となる下痢により、乳幼児は栄養摂取が阻害されたり、免疫力の低さから死亡する確率が高くなったりします。

栄養改善の様々な活動をしつつ、衛生面の改善も行うことが必要です。 

FIDRが推進するトイレは

ただのトイレじゃない!?

そこで、FIDRは、ただのトイレではない、洗面、洗濯、水浴びもできる「多目的トイレ」の設置を試み、2013年に自発的に名乗り出た11世帯に設置しました。

  

このトイレの内部は、各家庭のアイデアでデザインされ、お母さんたちが進んで利用する空間となり、「マザーズ・スペース」という愛称で呼ばれており、2018年には設置世帯が400を超えました。

説明会は夫婦一緒に参加


地域のニーズを確認したら、パイオニアとなってくれる世帯を集めます。

このとき、夫婦での参加が条件!

お父さんとお母さんの協力によって、各家庭自慢のマザーズ・スペースができあがります。

パイオニア世帯には、作業の手順とスケジュールが書かれたマニュアルが手渡されます。

 

さぁ、この地域では、どんなマザーズ・スペースが誕生するでしょうか?

建設は足並みそろえて


建設資材は、作業の進捗に応じて届きます。

遅れそうなところは助け合いながらやるなど、みんなで足並みをそろえて作業を進めるため、地域の連帯感も生まれます。

また、地下部分の建設にはお父さんや住民も参加し、まちから来た技術屋さんから直接指導してもらいます。それにより、地域に更なるニーズが出てきたときには、彼らが自分たちで建設することができます。

 

みんな、順調に進んでるかな~?

内装外装デザインは自由


地下の浄化槽の部分は、助成を受けることができますが、地上部分の資材は各家庭で調達します。ポイントは、天井と壁との間に少しスペースを開けておくことで、外部からの光が入り、また換気もできます。

 

竹を利用する人、トタンを利用する人、しっかりレンガづくりにする人。

 

家庭によってユニークなマザーズ・スペースの完成です!


ビデオ「マザーズ・スペースができるまで」

自分のスペースだから

いつもキレイに使いたい

マザーズ・スペースが完成したら、各家庭にはトイレの使い方と掃除の仕方が描かれたポスターが配られ、実地研修を行います。

我が家に初めてのトイレ。

しかも、作ってもらったのではなく、家族で協力してつくったオリジナルのトイレなので、愛着がわきます。

また、お母さんたちにとって、洗濯をする間はひとりになれる時間。

ふだん、大家族で暮らすこの地域では、なかなかお母さんが自分の時間と場所を確保することが難しいのが現実です。

家庭で辛いことがあったときも、自分と向き合える時間と場所が、マザーズ・スペースにはあるのです。

それまで海外からの支援や、行政が建設した公共のトイレは、きれいに維持されることがありませんでした。

しかし、マザーズ・スペースを設置した家庭を、数か月後、または1年後に訪問してみると、右の写真のようにきれいに維持されています。

トイレとしての機能だけではなく、洗濯も洗面もできるため、各家庭でお母さんが使いやすいようにアレンジされているのも特徴です。

また、今まではあまり見かけなかった柔軟剤を使いはじめたり、歯磨きセットの入れ物の上に鏡を取り付けたりと、身ぎれいにする習慣が、自然に身についていることが確認できます。

実際に、お母さんたちは「洗濯の回数が増えて、子どもたちにも清潔な服を着せてあげてるわ」と嬉しそうに語ってくれます。

アイデアいろいろ

私の自慢の「マザーズ・スペース」

各家庭自慢の「マザーズ・スペース」。写真をクリックしてじっくりご覧ください。

 

外装のデザイン、いろいろ

 

マザーズ・スペースが多目的・多機能トイレであることがわかる、内装のデザイン

 

自慢の「マザーズ・スペース」と一緒にハイ!チーズ!

家族を、地域をつなぐ

「どうやって作ったの?」

「うわ~便利そうね!」

 

お母さん自慢のマザーズ・スペースには、今日もご近所さんたちが訪れています。

「いいわね~」と言われて、お父さんもお母さんも満足げな様子。

それに、自慢に思うコトは、ぜひ人にも伝えたいと思うもの。

加えて、お父さん、お母さんの中には、喜んで自分の経験を伝え、他の家庭を啓発していく人があらわれています。

自分だけではなく、人も幸せに、と行動できる人たちは、いつしか地域のリーダーに。

その人たちによって、住民がつながり、良い習慣が自然と地域にひろがっているのです。

人を、地域を元気に、そして

子どもたちが健やかに育つ社会を

FIDRは、コントゥム省での取り組みのほかにも、現地の人々が、家族を、地域を「自分の力で変えられる」という自信をもち、その自信をもとに、地域の課題を自分たちの力で解決するための支援を、カンボジアベトナムネパールで行なっています。

 

生きる、育つ、学ぶ、夢を描く・・・

そんな「あたりまえ」を子どもたちへ。

 

あなたも、FIDRと一緒に子どもたちの未来をひらこう!